コミュニケーションは重要である。そのため、組織が重要となる。また、コミュニケーションを円滑にするためには、電話、電子メール、技術的打ち合わせといったものから、グループ間の依存関係の明確化や文書管理まで、あらゆる手段を活用すべきである。
文書管理
- プロジェクトに関する文書は全て一元的に管理し、全ての関係者が必要な情報をすぐに見られるようにすること。それらの文章を管理するツリー形式などの構造は、後々のことを考えて始めから整えておくこと。
- あらゆる文書を管理対象とすること。具体的には、目標や外部仕様、インターフェイス仕様、技術標準、内部仕様、管理上の覚え書きなどの文章も対象である。
- すぐに更新内容が反映されることが重要である。
- 更新履歴の管理も必要である。更新履歴は、更新内容の概要と具体的にいつどこがどのように更新されたかの情報を含む。更新履歴によって、最後に読んだ版と最新版との差分の把握が容易になる。
組織
組織の目的は、関係者間で必要なコミュニケーションと調整の量を減らすことにある。
ツリー構造を成している組織を考えたときに、その一部を成している部門の効率性の鍵となるのは技術ディレクターの役割とプロデューサーの役割である。
- 技術ディレクターの役割は、アーキテクトの担う役割である。ほぼ技術的な仕事で、部門内でのコミュニケーションが中心となる。
- プロデューサーの役割は、人や物といった開発リソースを確保したり管理したりする役割である。開発スケジュールを調整する役割も含まれる。部門外とのコミュニケーションが中心となる。
この2つの役割の割り振り方には以下の3パターンがある。どのパターンを採用するかは人材次第である。利用可能な人材に合わせて組織は作るべきなのである。
- 2つの役割を同じ人が務めるパターン。このパターンは、両方の役割について能力を持った人材が必要である。また、大規模なプロジェクトでは仕事量の面で1人が両方やるのは無理がある。よって、このパターンが適するのはプログラマ6人のチームぐらいまでである。
- プロデューサー役の人が上司で、技術ディレクター役の人が右腕となるパターン。技術ディレクターの役割に費やす時間を確保するため、その役割の人をマネジメントの指揮系統の連なり(係長、課長、部長、・・・)の中には位置づけないこと。しかしその一方で、技術ディレクター役の人に対して技術面の権限をきちんと確保することが重要である。このためにプロデューサー役の人が行うべき工夫の詳細は第7章の「The producer may be boss, the director his right-hand man.」の項を参照のこと。
- 技術ディレクター役の人が上司で、プロデューサー役の人が右腕となるパターン。このパターンは、要するに第3章のミルズの案である。
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「人月の神話」の要点
人月の神話の要点・ポイントをまとめています。原著に基づき、人月の神話の要点・ポイントを主に箇条書き形式でご紹介しています。